絵を描く技術を上達させるには

美術大学で学ぶことができなかったコンプレックス

私は家庭の事情により美大への進学は叶いませんでした。

高校卒業後1年間アルバイトしてお金を貯めたあと、グラフィックデザインの学校へ通いデザイナーになりました。

絵を仕事にするのは難しい…

でも、デザインの仕事だったら就職してお給料をいただくことができたので。

…と言いつつ、グラフィックデザイナーの仕事も今どきだったら超ブラックで、なかなか生活するのも厳しい状況だったりもしましたが(笑

その後働きながら油絵の教室に通ってみたり、ファッションイラストの学校(セツ・モードセミナーという塾のようなところ)に通ってみたり、一人暮らしで安月給の自分ができる範囲の勉強をしながら、ほぼ独学で絵を描き続けてきました。

絵を描き続けて来た中で、ある時期までは

「自分はアカデミックな芸術教育を受けていない」

ってコンプレックスがあったなぁ…って思います。

今はどうかって言うと、もうそのコンプレックスはありません(^^

どんないい美術大学を出ても、数年後に描き続けている人は何人いるでしょうか?

私の知り合いで有名どころの美大をでている人は結構いますけど、皆さん口を揃えて言うのは

「美大の大学院まででた人でも、10年後に描き続けている人は2割もいないんじゃない?」

ってことでした。(事実かは検証していませんが)

自分は描き続けてきた。
芸術活動を継続してきた。

継続は力なりっていますけれど、病気をしてなかなか思うようにいかない時期も長かった中で、自分は今までで描き続けてきた…

そんな思いが、いつしか「私は美大に行けなかった」ってコンプレックスを打ち消したのだと思います。

まあ、普通に美大をでて順調に制作活動をしている人から比べると、年齢的には10年は遅いスタートだったとは思いますけど…

スタートが遅い分、細くても長く描き続ければ、その継続がきっと力になります。

だから…

これから創作をしたい
自分らしい制作活動をしていきたい

って人も、いつからスタートしても遅くないし、美大をでていないからって臆することなどない…って思っています( ^^

さて、そんな美大に行っていない私が

「これをやったことで絵の技術が向上したな~」

って実感したことがあります。

この場合の絵の技術って言うのは「想像力」や「オリジナリティ」とは違う、絵を描く技術的なこと、です。

自分が描きたいわけではない絵を描く

若い頃、私はグラフィックデザインの仕事をしつつ、ほぼ独学で絵を描き続けていたわけですが…

その頃「壁画」を描く仕事をしている友だちに誘われ、時々スタッフとしてお手伝いすることになりました。

フリーでデザインの仕事しながら、時々、2~3日とか1週間とか、壁画の仕事の現場へ出向く感じでした。

あちこち地方の現場へも行きましたけど、とにかく制作の締め切りが決まっていたので現場とビジネスホテルの往復で。

壁画の仕事は依頼された絵を描く仕事なので、自分の創作とは違います。

絵柄を指定したA4くらいの紙を渡され、壁面に拡大して描くわけです。

大きな壁に向かって一日中立ったりしゃがんだり立ったりしゃがんだり…

建築現場だったり、リフォーム中のブティックだったり、新築のラブホテルだったり(笑

あ、だから私、高所作業所の免許(9.9mまで)持っているんですよ♪

建築中だから冷房も暖房もなかったり…
他の業者さんとの兼ね合いで、夜から朝までの現場だったり…
一度なんか営業中のラブホテルのリフォームで、お客さまとすれ違ったり…

壁画の仕事ってホント体力勝負でしたね~

でも当時は若かったのでがんばれたし、大変だけど楽しかったです(^^

そんな壁画の仕事での、絵を描くと言うことは…

  • 自分が普段描く絵と全然違うタイプの絵を
  • いつもの自分のタッチとは違う指定されたタッチで
  • 普段描くことのない大きなサイズで(壁だから)
  • 指定された時間内に仕上げる…

ってことでした。

この経験は、私の画家人生の中で、絵の技術力を向上させるのにとっても大きな力になりました。

普段の自分の制作活動とは違う、壁画の仕事での絵を描くと言う作業の中に、絵の技術力を向上させるヒントがあります。

ちなみに、この場合の絵が上達するって言うのは、オリジナリティとか創作能力ってことではありません。

「絵の技術力の向上」と言うことでご理解くださいね。

これから創作を始めたい
自分の世界を自由に描く技術力が欲しい
独学だけど絵が上手くなりたい

って方のご参考になるのではないかなって思います(^^

絵が上達するための3つの要素

絵が上達する要素、って1つ2つではなくて、いろいろな角度から見た技術習得の方法がたくさんあるのではないかと思います。

人によって、画家によって、絵の先生によって、考えはそれぞれだったり…

細かい技術的なことをあげたらきっとキリがありませんよね。

なので、あくまでも私の意見としてってことでご了承くださいね!

私が絵画教室で生徒さんに、

「絵が上達する要素をまずあげるとしたら何ですか?」

って聞かれたら…

・よく見ること
・いろいろな絵をたくさん描くこと
・描くことが好きであること

の3つをお答えします。

よく見ること

っていうのは、ただ眺める、瞳孔に写すってことじゃなくて、

「興味・関心を持ち、しっかり認識して見る」

ってことです。

いろいろな絵をたくさん描く

っていうのは、

「いつも同じようなテーマの絵ばかりじゃなくていろいろなテーマで」
「自分が普段描くタイプの絵だけじゃなくて、いろいろな絵を」
「いつもの自分のタッチだけじゃなくて時には違うタッチで」

たくさん描くってことです。

描くことが好きであること

ていうのは、このブログを読んでくださったいる方には言うまでもないことですね(^^

私たちが創作活動をする上では、仕事で締め切りがあったり制約があったりってことでなければ

自分が描きたい世界観を
描きたいサイズで
表現したいタッチで
自分のペースで

描くわけですが、絵の技術を向上させる1つの方法として壁画の仕事の内容を応用してみると

  • 自分が普段描く絵と全然違う絵を描く
  • いつもの自分のタッチとは違うタッチで描く
  • 普段描くことのないサイズで描く
  • 決まった時間内に仕上げる…

ということを意図的に取り入れて描くと良い、と思います。

絵が上達する過程…Aくんの場合

壁画の仕事…なんていうと特殊な環境を例に出されてもだからわかりづらい…

って思われる方もいるかもしれません。

そこで、もう1つ例を挙げたいと思います。

私は以前に知的障がいがある小学生の絵の個別指導を、半年ほどしていました。

仮にその子をAくんとします。

6年生とはいえ、知的障がいがあったAくんの最初に描いてもらった作品はこちら↓


ウルトラマンが大好きだったのです(^^

それから週に1回のペースで半年ほど、絵画指導をしたわけですが、半年後の作品はこちらです。


ウルトラマンはでてきますが(笑)

遠くに船が見える横浜の街並、虹が渡る空、ベイブリッジ…

とってもグレードアップしていると思います。

この半年間、Aくんが絵以外の面でも心の成長を遂げた、っていうこともあるのですが、たった半年、週に1回1時間程度の絵画指導でこんなに成長するなんて、って驚いたものです。

年末年始のお休みなんかもあったので、そうそうたくさん時間があったわけではありません。

これは、私の教え方がどうとかってことじゃなくて…

それまでウルトラマンを好きなように描くだけだったAくんが

  • ウルトラマン以外のものも描いた(家族、出かけた場所のようす、など)
  • 写真や他の絵を見て描いたりした(ディズニーの絵とか参考写真を見て描いた)
  • いろいろなものを描くことで、家族で出かけた時などにまわりのようすなどをしっかり見るようになった
  • 絵具の使い方など技術的なアドバイスを受けた
  • 完成した絵を褒められて絵を描くことがもっと好きになった

などといった経験を積むことで、絵の上達に繋がったのだと思われます。

この中で、壁画の仕事と共通の絵が上達する要素としては

ウルトラマン以外のものも描いた
写真や他の絵を見て描いたりした

っ部分です。

  • 自分が普段描く絵と全然違うタイプの絵を描く
    →ウルトラマン以外のもの、風景や家族、出かけた思い出などを描いた
  • いつもの自分のタッチとは違うタッチで描く
    →写真や他の絵を見て描いたりした
  • 普段描くことのないサイズで描く
    →家で描くよりも大きな画用紙などに描いた
  • 決まった時間内に仕上げる
    →絵画指導は週に1回1時間ほど。内容によっては数回かかって仕上げましたが、家で描くように時間を自由に使って描いたわけではありません。

ということで、半年で大きな成長を遂げたのではないかな?と思います。

あと、もちろん一番は本人のやる気と努力があったからこそ、ですね(^^

絵が上達する方法

絵が上達する3つの要素

・よく見ること
・いろいろな絵をたくさん描くこと
・描くことが好きであること

の中から、私が壁画の仕事を通して実践したことが、

「いろいろな絵をたくさん描く(自分が描かないタイプの絵も描く)」

この体験が絵の技術力向上にとっても役立ちました。

自分と違うタイプ、違うタッチの絵、ってことは、参考にするべき絵が必要なので、ようは模写ですね。

模写は絵の技術の上達に役立つってよくいわれることですが、今回どういう絵を選ぶのかっていうと、自分が理想とする絵、や、目指す画家の絵、っていうよりも、

自分と違うタッチの絵
自分が描いたことないタイプの絵

普段の自分の範囲を越えた作品を選んで模写してみるといいのではないかなって思います。

しかも、たくさん(^^)

模写って、模写する作品を描いた画家がどのような考えでこの構図にしたのか?など、描いた画家の考えを想像しながら描くといいよって言われますよね。

今回の絵が上達するヒントとしては、元の絵を描いた人の考えを想像しながら、ではなくていいので、

普段自分が描く絵と違うタイプの絵を普段の自分と違うタッチで

たくさん描く

ってとこがポイントです。

あとね、のんびりたっぷり納得いくまで時間をかけて、っていうことではなく、

時間を決めて

描いてみるのもオススメです。

スポーツで言うと、技術的な練習じゃなくて、基礎体力の向上のための単純運動を反復練習する、ってとこかな。

ちょっと違うかな(笑

…ということで、まとめると

絵が上達する3つの要素

  • よく見る…興味・関心を持ち、しっかり認識して見る。
  • いろいろな絵をたくさん描く…いつも同じテーマではなくいろいろなテーマで描く。いつも描くタイプの絵だけじゃなくて普段自分が描かないタイプの絵、普段の自分の制作とは違うタッチの絵も描く。
  • 描くことが好きであること

これから絵の技術力を向上させたい、って場合の絵が上達する方法

  • 日頃から興味・関心を持ってしっかり認識してものを見る力を身につける
  • 自分が普段描く絵と違うテーマ、違うタイプの絵を描く
  • いつもの自分のタッチとは違うタッチで描く
  • 普段描くことのないサイズで描く
  • 時間を決めて描いてみる

ってことを技術向上の練習のひとつとして、取り入れてみていただくといいと思います(^^

創作画を描きたい、自分の世界を絵にしたい、って思ったら、それを表現する技術力は必要ですよね。

描くための技術は、創作のための大きな力になります。

参考にしていただけるかなってことをいろいろ書いてみましたけれど、私もこれからもっと絵の技術をあげるように努力して、見てくださった方の心に響く絵を描けるように精進していきたいと思っています(^^

得た技術を力に、あなたが描く素敵な物語の世界がどんどん広がりますように☆